法人の青色申告はメリットしかない?最大10年の赤字繰越と節税効果を徹底解説

法人の青色申告は「やらないと損」な制度です。最大10年間の赤字繰越(欠損金の繰越控除)や30万円未満の資産計上など、数百万単位で税金が変わるメリットを解説。白色申告との違いや申請期限、取り消されないための注意点まで網羅します。

「法人を設立したら、まずは青色申告」と聞いたけれど、具体的に何がお得なのかよくわからない……。
手続きが面倒なら、白色申告でもいいんじゃないか?

もしあなたがそう考えているなら、会社の資金繰りにおいて、非常に大きな損失(数百万円〜数千万円規模)を出してしまう可能性があります。

結論から申し上げます。法人の場合、青色申告を選ばない理由は99%ありません。

個人事業主の青色申告とは比較にならないほど、法人の青色申告には強力な「節税メリット」と「会社を守る権利」が付与されているからです。特に創業期の赤字を将来の黒字と相殺できる「欠損金の繰越控除」は、会社の生存率を左右する命綱となります。

この記事では、難解な税務用語を噛み砕き、「なぜ法人は青色申告一択なのか」その根拠と具体的なメリット、そして申請のタイミングについて徹底解説します。

この記事でわかること

  • 法人が青色申告をするべき決定的な理由
  • 「欠損金の繰越控除」で数百万得する仕組み
  • 30万円未満のパソコンを経費で即落とす方法
  • 税務調査で「推計課税」されないための防御策
目次

法人の青色申告とは?白色申告との決定的な違い

まず前提として、法人税の申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。

しかし、個人事業主とは異なり、法人の場合は「事前の承認申請」を出さない限り、自動的に白色申告扱いになってしまいます。そして、法人の白色申告にはメリットがほぼ存在しません。

青色申告とは、一定の帳簿書類を備え付けて正しく記帳・申告を行う法人に対し、税制上の多くの特典(=アメ)を与える制度です。

項目青色申告白色申告
帳簿の義務複式簿記(必須)基本不要だが、法人は実質必要
赤字の繰越可能(最大10年)不可(切り捨て)
30万円未満の資産一括経費にできる減価償却が必要
税務調査リスク推計課税の禁止(守られる)推計課税のリスクあり

法人はそもそも会社法によって「複式簿記」による記帳が義務付けられています。つまり、「やるべき手間(帳簿作成)」は同じなのに、青色申告の申請書一枚出していないだけで、すべての節税特典をドブに捨てることになるのです。

【最大のメリット】欠損金の繰越控除(赤字を10年間ストックできる)

法人の青色申告において、最もインパクトが大きいのがこの「欠損金の繰越控除」です。

簡単に言えば、「今年出た赤字を、将来の黒字と相殺して税金をゼロ(または減額)にできる制度」です。

重要:期間は「7年」ではなく「10年」

以前は繰越期間が「7年間」でしたが、平成30年度の税制改正により、現在は「10年間」に延長されています(平成30年4月1日以後に開始する事業年度において発生した欠損金)。

繰越控除のシミュレーション

例えば、創業1年目に500万円の赤字が出て、2年目に300万円の黒字が出たとします。

白色申告の場合

  • 1年目:赤字なので法人税はゼロ(均等割のみ)。赤字500万円はそこで消滅。
  • 2年目:300万円の利益に対して、約23%〜の法人税がかかる(約70万円の納税)。

青色申告の場合

  • 1年目:赤字500万円を「欠損金」として翌年以降に繰り越す。
  • 2年目:利益300万円 ー 繰越赤字500万円 = 所得はマイナス200万円扱い。

結果、2年目の法人税もゼロになります。さらに、使いきれなかった残り200万円の赤字は、3年目以降にも持ち越せます。

創業期は赤字になりやすいため、この制度を使えるかどうかが、その後のキャッシュフロー(手元資金)に直結します。

欠損金の繰戻し還付(過去の税金が戻ってくる)

逆に、「前期は黒字で税金を払ったが、今期は赤字になってしまった」という場合、前期に納めた法人税を返してもらうことができます(欠損金の繰戻し還付)。

資金繰りが苦しい赤字決算のときに、過去の税金が現金として戻ってくるのは、企業にとって大きな救済措置です。

中小企業経営者が知っておくべき「税額控除・特別償却」

青色申告をしていると、設備投資をした際に強力な節税オプションが使えます。特に中小企業(資本金1億円以下など)には手厚い優遇があります。

1. 少額減価償却資産の特例(30万円未満なら即経費)

通常、パソコンや応接セットなど10万円以上の資産は、数年かけて経費にする「減価償却」が必要です。

しかし、青色申告法人であれば、30万円未満の資産なら、購入した年度に全額を経費(損金)として計上できます(年間合計300万円まで)。

「今期は利益が出すぎそうだから、新しいPCを買い替えよう」といった決算対策が使えるのは、この特例のおかげです。

2. 中小企業経営強化税制などの活用

機械装置やソフトウェアなど、特定の設備を取得した場合に以下のいずれかを選択できます。

  • 特別償却:購入額の全額(または一部)を即座に経費にする。利益の圧縮(課税の繰り延べ)に有効。
  • 税額控除:購入額の7%〜10%相当額を、法人税額から直接差し引く。直接的な減税効果がある。

これ以外にも、以下のような特定の条件・地域に応じた多数の優遇措置が用意されています(ご提示いただいた特典リストの一部抜粋)。その他の青色申告特典(特別償却・税額控除)の例

  • エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合
  • 沖縄の特定地域において工業用機械等を取得した場合
  • 試験研究を行った場合の税額控除(研究開発減税)
  • 賃上げを行った場合の税額控除(所得拡大促進税制)

税務調査のリスクから会社を守る「2つの権利」

節税面ばかり注目されますが、元国税調査官などの専門家が「青色申告の最大のメリット」として挙げるのが、税務調査に対する防御力です。

1. 推計課税の禁止

白色申告の場合、帳簿が不備だったり資料がなかったりすると、税務署が近隣の同業者の利益率などを参考に「お宅の売上はこのくらいあるはずだ」と推測で税金を決めることができます(推計課税)。

一方、青色申告法人の場合、帳簿に基づかない推計課税は法律で禁止されています。しっかり帳簿をつけている限り、理不尽な課税から守られます。

2. 更正通知書への理由付記

税務署が申告内容を修正(更正)する場合、青色申告法人に対しては、「なぜ修正が必要なのか」という具体的な理由を通知書に書かなければならない義務があります。

理由が曖昧な課税処分ができなくなるため、税務署側も慎重にならざるを得ず、結果として納税者の権利が守られます。

法人の青色申告承認申請書の提出期限はいつ?

これほどメリットのある青色申告ですが、「提出期限」を1日でも過ぎると、その期は強制的に白色申告になります。ここだけは絶対にミスが許されません。

新設法人の場合

会社設立から「3ヶ月以内」または「設立後最初の事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日までに提出する必要があります。

基本的には、設立届と一緒に提出するのがセオリーです。

既存法人が白色から切り替える場合

青色申告を適用しようとする事業年度開始の日の前日までに提出が必要です。

【国税庁】青色申告の承認申請書ダウンロードはこちら

まとめ:法人は「設立届」と一緒に「青色申告申請」を!

法人の青色申告について解説しました。ポイントを振り返ります。

  • 法人は黙っていると「白色申告」になる(メリットなし)。
  • 青色申告なら赤字を10年間繰り越せる(最大の節税)。
  • 30万円未満の資産を経費化するなど、柔軟な決算対策が可能。
  • 税務署の「推計課税」から会社を守る盾になる。

法人が青色申告を行わないことは、現金をドブに捨て、税務リスクを背負い込むことと同義です。

ただし、青色申告の要件である「複式簿記」の記帳や、複雑な「別表」の作成は、素人が自力で行うには限界があります。ミスがあれば青色申告の取り消しリスクもあります。

まずは、信頼できる税理士に相談し、設立当初から盤石な経理体制を整えることを強くおすすめします。その「顧問料」以上の節税効果が、青色申告には確実にあります。

次のアクション

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この記事を書いた人

会社員時代に副業でWebライターを開始し、開業届の提出から青色申告への切り替えまでを独学で完遂。「会社にバレない申告方法」や「副業ならではの経費計上」の実践研究が得意。現在は専業フリーランスとして活動中。難しい専門用語を使わず、初心者でも今日から使える申告術をわかりやすく解説します。

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