この記事でわかること
- 現金主義の特例を使える「300万円以下」の適用条件
- 現金主義と発生主義の違い(経理は簡単だが控除は最大10万円)
- 判定基準となる所得の合計額の数え方
- 受取手形・支払手形・小切手の処理
- 不渡りが発生した場合の調整
公的情報源: 国税庁 現金主義による所得計算の特例(2026年6月閲覧)
結論を先に書きます
前々年の所得が300万円以下の青色申告者 は、税務署長の承認を受けることで 「現金主義による所得計算」 の特例を使えます。これは「お金が入った時に売上、払った時に経費」という家計簿に近いシンプルな処理で、売掛金・買掛金の管理が不要 になり経理が大きく楽になります。ただし、現金主義を選ぶと特別控除は最大10万円 になり、65万円控除は受けられません。経理の手間を減らすか、控除を取るかのトレードオフです。
- 条件=前々年の所得(控除前)が300万円以下の青色申告者
- 承認申請(届出書の提出)が必須
- メリット=売掛金/買掛金の管理が不要で経理が簡単
- デメリット=特別控除が最大10万円(65万円控除は不可)
現金主義による所得計算とは|小規模事業者の特例
青色申告は原則「発生主義(取引が発生した時点で計上)」ですが、特例として「現金主義(現金の動きがあった時点で計上)」が認められるケースがあります。
現金主義が認められる「300万円以下」の条件
現金主義で経理するには、要件を満たし税務署長の承認を受ける必要があります。
- 対象者:青色申告者であること
- 所得基準:前々年の「不動産所得」および「事業所得」の合計額が300万円以下であること
- 手続き:所轄税務署長に「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出し承認を受けること
重要なのが「所得の合計額」の数え方です。判定基準の300万円は、次の控除を「差し引く前」 の金額で判断します。
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与(事業専従者控除額)
つまり、手元に残った利益が少なくても、家族への給与や控除前の金額が300万円を超えていれば特例を使えないため注意が必要です。
現金主義と発生主義の違い
| 項目 | 発生主義(原則) | 現金主義(特例) |
|---|---|---|
| 計上のタイミング | 請求書を出した時/受け取った時 | 入金された時/支払った時 |
| 管理の手間 | 「売掛金」「買掛金」の管理が必要 | 通帳や領収書の日付だけでOK |
| メリット | 65万円の特別控除が狙える | 経理が簡単になる |
| デメリット | 経理知識と手間が必要 | 特別控除額が最大10万円になる |
現金主義を選ぶと最高65万円の特別控除は受けられなくなり、通常は10万円控除になります。その代わり 「経理にかかる時間」を削減できる のが、小規模事業者にとっての価値です。
【実務】手形・小切手がある場合の現金主義計算
現金主義は「現金」の動きを見ますが、手形や小切手はルールが定められています。
1. 受取手形の処理
商品やサービスを提供して手形を受け取った場合、手形を受け取った時ではなく「手形が現金化された時」 が基準です。
- 手形の支払を受けた(満期)場合:実際に支払を受けた時に金額を収入金額に算入
- 手形を割引した場合:割り引いた(現金化した)時に手形金額を収入金額に算入。差し引かれた割引料は必要経費に算入
割引して現金化した手形が 不渡りになり弁済した場合は、その年分の収入金額から支払った金額を減額 します(一度計上した収入を取り消す処理)。
2. 支払手形の処理
支払いのために手形を振り出した場合は、実際に口座から引き落とされた時(決済時) に金額を必要経費に算入します。
3. 小切手の処理
小切手は手形より現金に近く、「受取」または「振出し」の時 の収入金額または必要経費に算入します。受け取った小切手を収入計上後に不渡りだった場合は、その不渡りとなった年分の収入金額または必要経費から、小切手金額に相当する額を減額します。
よくある質問
Q1. 現金主義にすると65万円控除は受けられませんか?
受けられません。現金主義を選択すると特別控除は最大10万円になります。65万円控除を狙うなら発生主義(複式簿記+e-Tax)が必要です。経理の手間と控除額のどちらを優先するかで選びます。
Q2. 所得300万円の判定は手取りで見ますか?
いいえ。前々年の不動産所得と事業所得の合計を、青色申告特別控除や専従者給与(事業専従者控除額)を差し引く前の金額で判定します。手元に残った利益ではない点に注意してください。
Q3. 現金主義に変えるにはどうすればよいですか?
所轄の税務署長に「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出して承認を受けます。要件(前々年の所得300万円以下の青色申告者)を満たしているか確認してから手続きします。
Q4. 売掛金や買掛金の管理は本当に不要になりますか?
現金主義では入金・支払のあった時点で計上するため、売掛金・買掛金の繰り越し管理は基本的に不要です。通帳や領収書の日付で処理できるため、取引がシンプルな小規模事業者の負担が軽くなります。
まとめ|経理の手間と控除のトレードオフ
- 現金主義は前々年の所得(控除前)が300万円以下の青色申告者の特例
- 適用には税務署長への承認申請が必須
- 手形は決済時・割引時、小切手は受取・振出時に計上
- 65万円控除を諦める代わりに経理の時間を削減できる選択
「売上規模はまだ小さいが、経理に追われて営業活動ができない」という方は、現金主義の特例が選択肢になります。管轄の税務署へ相談するか、国税庁サイトから届出書をダウンロードして準備を始めましょう。
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免責事項
※本記事は2026年6月時点の公開情報・国税庁公式をもとにした整理です。税制・特例の要件は改正されることがあり、手形・小切手の処理は個別事情で異なります。具体的な税務判断は税理士または所轄の税務署へご相談ください。

