「妻(夫)がこれだけ手伝ってくれているのに、給料を経費にできないなんて…」
個人事業主として白色申告をしているあなた、こんな理不尽さを感じたことはありませんか?
実は、白色申告であっても、家族への対価を「控除」という形で税金計算上のメリットに変える方法があります。それが「事業専従者控除」です。
しかし、この制度は少し複雑です。「配偶者控除とどっちが得なのか?」という判断を誤ると、かえって税金が高くなってしまう落とし穴も存在します。
この記事では、以下の疑問を完全に解決します。
- 事業専従者控除の正確な金額と計算方法
- 「配偶者控除」とどちらを選ぶべきかの判断基準
- 確定申告書への具体的な書き方
この記事を読み終える頃には、あなたの家庭にとって「最も手残りが多くなる節税策」が明確になり、迷いなく確定申告を進められるようになるはずです。
事業専従者控除とは?白色申告だけの特例措置
まず、制度の全体像を把握しましょう。通常、生計を一にする家族へ支払う給与は、原則として必要経費になりません。しかし、それでは実態に即していないため、特例として設けられているのがこの制度です。
家族への「給与」を経費にできない代わりの制度
青色申告であれば「青色事業専従者給与」として、支払った給与の全額を経費にできます。しかし、白色申告では家族への給与を経費にすることは認められていません。
その救済措置として、一定の要件を満たした家族(専従者)がいる場合に、所得から一定額を差し引く(控除する)ことができるのが「事業専従者控除」です。
ここがポイント
「給料を経費にする」のではなく、「決まった金額を所得から引く(控除する)」という仕組みです。実際の金銭の授受がなくても適用可能です。
【チェックリスト】事業専従者控除を受けるための4つの要件
この控除を受けるためには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。一つでも欠けると適用されないため、慎重に確認してください。
| 1. 関係性 | 白色申告者と生計を一にする親族(配偶者や親、子など)であること。 |
|---|---|
| 2. 年齢 | その年の12月31日現在で15歳以上であること。 ※学生は原則対象外です。 |
| 3. 従事期間 | その年を通じて6ヶ月を超える期間、その事業に専ら従事していること。 (年の途中で開業した場合は、開業期間の2分の1を超える期間) |
| 4. 専従性 | 専らその事業に従事していること。 ※他に本業がある場合は認められません。 |
「専ら従事」として認められないケースに注意
要件の中で最もトラブルになりやすいのが「専従(専ら従事)」の定義です。以下のケースは原則として対象外となります。
- 学生・生徒(高校、大学、専門学校など)
※夜間学校などで、昼間の事業従事に支障がない場合は例外的に認められることがあります。 - 他に職業がある人
※パートやアルバイトをしていて、そちらの従事時間が長い場合は「専従」とは認められません。
いくら安くなる?事業専従者控除額の計算式
ここが最も重要なパートです。控除額は「一律」ではありません。以下の計算式に基づき、【1】と【2】のいずれか低い金額が適用されます。
計算のルール:2つの金額を比較する
事業専従者控除額の決定ルール
次の【1】と【2】を比較して、少ない方の金額が控除額となります。
【1】上限設定額(固定額)
- 配偶者の場合:86万円
- 配偶者以外の親族の場合:50万円(一人につき)
【2】所得による限度額(計算式)
事業主が赤字にならないようにするための制限です。
(事業専従者控除前の所得金額) ÷ (事業専従者の数 + 1)
具体的な計算シミュレーション
言葉だけでは分かりにくいため、具体例で計算してみましょう。
ケースA:事業所得(控除前)が500万円、妻が専従者の場合
- 【1】上限額:86万円
- 【2】限度額:500万円 ÷ (1人 + 1) = 250万円
結果:86万円 < 250万円 なので、控除額は86万円です。
ケースB:事業所得(控除前)が100万円、妻が専従者の場合
- 【1】上限額:86万円
- 【2】限度額:100万円 ÷ (1人 + 1) = 50万円
結果:86万円 > 50万円 なので、控除額は50万円となります。
【最重要】配偶者控除と事業専従者控除は併用できない
多くの白色申告者が悩むのがここです。事業専従者控除を受けると、配偶者控除(および配偶者特別控除、扶養控除)は一切受けられなくなります。
つまり、「どちらがお得か?」を天秤にかける必要があります。
判断基準:所得が38万円を超えるかどうか
一般的な配偶者控除の額は最大38万円です。
- 事業専従者控除(最大86万円)を使うと、この38万円の枠は消えます。
- しかし、控除額が38万円以上になるのであれば、基本的には事業専従者控除の方が有利です。
ただし、先ほどの計算式【2】により、事業自体の利益が少ない場合は、控除額が38万円を下回る可能性があります。その場合は、無理に専従者扱いにせず、配偶者控除(38万円)を受けたほうが有利なケースもあり得ます。
注意点
一度「事業専従者」として届け出ると、その年は配偶者控除を受けられません。申告前に必ずシミュレーションを行いましょう。
複数事業がある場合の按分計算
最近では、事業所得以外に不動産所得や山林所得など、複数の事業を営む方も増えています。専従者が複数の事業を手伝っている場合はどうなるのでしょうか?
原則として、以下のルールで計算します。
- 仕事の内容が明確な場合:合理的に給与を按分できるなら、その比率で分けます。
- それ以外の場合:均等に事業に従事したものとして計算します。
不動産所得(アパート経営など)がある方は、事業所得と合算して計算するため少し複雑になります。不安な場合は税理士への相談を推奨します。
確定申告書への書き方と手続き
事業専従者控除を受けるためには、確定申告書に必要事項を記載しなければなりません。事前の届出は不要ですが、申告書への記載漏れがあると控除が受けられないため注意が必要です。
収支内訳書への記載
白色申告で使用する「収支内訳書」の1ページ目にある「事業専従者に関する事項」欄に記入します。
- 氏名:専従者の名前
- 年齢:年齢
- 続柄:妻、子など
- 従事月数:何ヶ月働いたか(6ヶ月超が必要)
- 控除額:計算した金額
確定申告書Bへの記載
第一表の「所得から差し引かれる金額」の欄ではなく、「事業所得」の計算過程で差し引く形になります(経費のような扱い)。
※令和5年分以降の様式変更等により、記載箇所が変更になる場合があるため、国税庁の手引きを参照してください。
【潜在的な悩みへ】本当に白色申告のままでいいですか?
ここまで事業専従者控除について解説しましたが、正直にお伝えします。
「家族に手伝ってもらっている」なら、白色申告のままでは損をし続けている可能性が非常に高いです。
青色申告なら、給与を「全額」経費にできる
白色申告の事業専従者控除は、どんなに頑張っても配偶者なら86万円が限界です。しかし、青色申告に切り替えれば、「青色事業専従者給与」として、常識的な範囲内であれば月給20万円(年240万円)でも全額経費にできます。
| 項目 | 白色申告(事業専従者控除) | 青色申告(専従者給与) |
|---|---|---|
| 経費化できる額 | 上限86万円(配偶者) | 上限なし(適正額なら全額) |
| 特別控除 | なし | 最大65万円 |
| 赤字の繰越 | 不可 | 3年間可能 |
つまり、青色申告にするだけで、「家族への給与を経費化」+「65万円の特別控除」のダブル効果で、税金が数十万円単位で変わることも珍しくありません。
まとめ:まずは正しい控除額の把握から
今回の記事のポイントをまとめます。
- 事業専従者控除は、白色申告者が家族への対価を経費化する唯一の手段。
- 控除額は「上限額(配偶者86万)」と「所得÷(人数+1)」の低い方。
- 配偶者控除とは併用できないため、どちらが得か比較が必要。
- さらに節税効果を高めるなら「青色申告」への変更が最強の選択肢。
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