「青色申告をしているけれど、引当金(ひきあてきん)の欄はいつも空欄のまま提出している」
「貸倒引当金という言葉は聞くけれど、計算が難しそうで諦めている」
もしあなたがそう考えているなら、毎年数万円から数十万円単位の「節税チャンス」をドブに捨てているかもしれません。
青色申告には、特別控除(最大65万円)以外にも、強力な特典が用意されています。それが「引当金の繰入(くりいれ)」です。
これは一言で言えば、「将来のリスクに備えるお金を、今のうちから『経費』として計上していいですよ」という、国が認めた公式の節税ルールです。
実際にお金が出ていくわけではないのに、税金を減らすことができる。これを使わない手はありません。
この記事では、国内トップクラスの実績を持つSEOコンテンツストラテジストが、難解な税務用語を噛み砕き、青色申告の引当金制度について徹底解説します。
この記事でわかること
- 貸倒引当金:売掛金の5.5%を無条件で経費にする裏ワザ
- 返品調整引当金:在庫リスクを経費に変える方法
- 退職給与引当金:従業員の退職金準備を経費にする仕組み
- 今日からできる具体的な計算シミュレーション
この記事を読み終える頃には、あなたの確定申告書に新たな「経費」が加わり、手元に残るキャッシュが増えているはずです。ぜひ最後までお付き合いください。
青色申告の「引当金」とは?なぜ節税になるのか
具体的な種類の解説に入る前に、まずは「引当金」の基本概念をサクッと理解しましょう。
通常、経費というのは「お金を支払った時」に計上するものです。しかし、引当金は違います。
「将来発生するかもしれない損失や費用」を見越して、あらかじめ当期の経費として計上するものです。
- 通常:お金を使う ➡ 経費になる ➡ 税金が減る(手元資金は減る)
- 引当金:お金を使わない ➡ 経費になる ➡ 税金が減る(手元資金は残る!)
青色申告者には、主に以下の3つの引当金が認められています。
- 貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)
- 返品調整引当金(へんぴんちょうせいひきあてきん)
- 退職給与引当金(たいしょくきゅうよひきあてきん)
特に多くの個人事業主に関係するのが、次に紹介する「貸倒引当金」です。
1. 貸倒引当金:最も使いやすい最強の節税策
売掛金や貸付金があるなら、ほぼ確実に計上できるのがこれです。「一括評価」と「個別評価」の2種類を使い分けましょう。
貸倒引当金とは、取引先の倒産などで売掛金が回収できなくなる(貸し倒れ)リスクに備えて、一定額を経費にする制度です。
① 一括評価による貸倒引当金(青色申告だけの特典)
これが最もポピュラーで、実務でよく使われるものです。
相手が倒産していなくても、年末に残っている売掛金などの合計額に対して、一律「5.5%」を経費に入れられます。
| 対象となる債権 | 事業遂行上の売掛金、貸付金、未収の加工料・手数料・請負金など |
|---|---|
| 繰入率(経費にできる割合) | 5.5%(金融業の場合は3.3%) |
| 条件 | 青色申告をしていること |
具体例で見る節税効果
年末の売掛金残高が500万円ある場合
5,000,000円 × 5.5% = 275,000円
なんと、27万5千円も新たな経費を作ることができます。税率が20%の人なら、約55,000円の税金が安くなる計算です。
② 個別評価による貸倒引当金
こちらは「実際に危ない状況」にある債権に対して設定するものです。青色申告・白色申告どちらでも適用可能です。
以下のような特定の事由が発生した場合、その回収不能見込額を個別に評価して経費計上します。
- 法的手続きの開始:会社更生法や民事再生法の申し立てが行われている場合。
- 債務超過の継続:相手の債務超過が続き、事業好転の見通しがなく、取り立ての見込みがない場合。
- 5年以上の長期未回収:特定の債権で、弁済期限から5年以上経過しても回収できない金額がある場合。
- 海外政府への債権:長期の履行遅滞などにより、経済的価値が著しく低下している場合。
これらは「実際に焦げ付きそうな時」に使うものなので、日常的な節税対策としては「一括評価」をメインに考えましょう。
2. 返品調整引当金:在庫ビジネスのリスクヘッジ
出版業や医薬品販売など、商慣習として「返品」が多く発生する業種特有の引当金です。
商品を販売しても、後で「返品したい」と言われる可能性があります。その際、利益が減ってしまうリスクに備えて、過去の返品実績率(返品率)に基づいて計算した金額を経費に算入できます。
適用できる主な条件
- 指定された事業(出版、医薬品、化粧品、既製服などの製造・卸売など)を営んでいること。
- 販売先との間で「無条件で買い戻す」という特約(買戻し特約)を結んでいること。
- 常時、その特約に基づいて買い戻しを行っていること。
「売ったけど、どうせ一定割合は戻ってくる」という確実性が高いビジネスモデルの場合、この引当金を使うことで利益の波を平準化し、税負担を適正化できます。
3. 退職給与引当金:従業員の未来と会社を守る
注意:この制度は非常に専門性が高く、適用要件が厳格です。導入の際は必ず税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
事業所得のある青色申告者で、従業員(親族を除く)のためにしっかりとした「退職給与規程」を作っている場合、将来支払う退職金の一部を経費にできる制度です。
導入に必要な「退職給与規程」の要件
ただ「退職金を出すつもりだ」と思っているだけではダメです。以下のいずれかの規定が必要です。
- 労働協約により定められた規程
- 労働基準法などに基づき、行政官庁(労基署)に届け出た就業規則の規程
- (行政への届出義務がない場合でも)作成した規程を税務署長に届け出た場合
繰入額の計算方法(簡易解説)
計算は少し複雑ですが、基本的には以下の3つの基準額を比較し、最も低い金額などを採用します。 【イ】退職給与発生基準額 (期末の要支給額)-(前年末から在籍する人の前年末時点の要支給額)
※つまり、今年1年で増えた退職金負担分です。 【ロ】累積限度基準額 (期末要支給額 × 20%)から、すでに積み立ててある引当金を引いた額。
※退職金総額の20%までしか枠を持てないという制限です。 【ハ】給与総額基準額 (従業員の年間給与総額)× 6%
基本的には、これらの計算式を用いて算出された金額を必要経費として計上します。従業員を大切にし、長く働いてもらいたいと考えている事業主にとっては、経営の安定化と節税を両立できる優れた制度です。
引当金を活用する際の申告手続き
「よし、引当金を使おう!」と思ったあなた。最後に重要な手続きがあります。
引当金を経費にするためには、確定申告書(青色申告決算書)への記載が必須です。
勝手に帳簿につけておくだけでは認められません。
- 青色申告決算書の「引当金」欄に計算根拠と金額を記入する。
- 特に退職給与引当金の場合は、明細の記載が必須要件となります。
また、引当金は「洗替法(あらいがえほう)」という処理が基本です。前年に計上した引当金を一度全額「収入(戻入)」に戻し、改めて今年の分を「経費(繰入)」として計上し直す処理が必要です。 Q. 会計ソフトを使っていますが、自動で計算してくれますか?多くのクラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)には、決算処理のステップで「貸倒引当金の計上」をサポートする機能があります。ただし、自動入力ではなく「登録ボタン」を押す等の操作が必要な場合が多いため、必ず確認しましょう。Q. 売掛金が少ない場合でも計上すべきですか?はい、少額であっても計上するメリットはあります。ただし、手間と節税額のバランスを考えて判断してください。
まとめ:引当金は「守り」であり「攻め」の節税術
青色申告の引当金について解説しました。要点を振り返りましょう。
- 貸倒引当金(一括評価)は、売掛金の5.5%を経費にできる最強の特典。
- 個別評価は、取引先が危ない時のリスクヘッジ。
- 退職給与引当金などは、規定の整備が必要だが経営安定に役立つ。
- 適用には青色申告決算書への記載が必須。
引当金は、ただ税金を安くするだけでなく、「将来のリスクを数字で見える化する」という経営的なメリットもあります。
「まだやっていなかった」という方は、次回の確定申告から必ず取り入れてください。このひと手間で、あなたの手元に残るお金は確実に増えます。
「計算が合っているか不安」「自分の業種で使えるかわからない」
そう感じる方は、自己判断でミスをする前に、税理士や青色申告会の無料相談を活用するか、高機能な会計ソフトのサポートを利用することをおすすめします。適正な納税と、最大限の節税。この2つを両立させてこそ、賢い経営者です。

