この記事でわかること
- 赤字でも確定申告すべき理由
- 純損失の繰越控除(3年間の繰り越し)の仕組み
- 純損失の繰戻し還付(前年の税金を取り戻す)の仕組み
- この制度に青色申告が必須な理由と、3年シミュレーション
- 赤字でも申告する手順と要件
公的情報源: 国税庁 No.2070 青色申告制度/No.2240 申告と納税(2026年6月閲覧)
結論を先に書きます
事業が赤字でも、「赤字だから申告しない」のは大きな損 です。税制には失敗した年を救済する仕組みがあります。純損失の繰越控除 は今年の赤字を翌年以降3年間繰り越し、将来の黒字と相殺して税金を減らせます。純損失の繰戻し還付 は今年の赤字を前年の黒字と相殺し、納めた税金を現金で取り戻せます。どちらも 青色申告であること が条件です。
- 繰越控除=今年の赤字を3年間繰り越して将来の黒字と相殺
- 繰戻し還付=今年の赤字を前年の黒字と相殺して現金で還付
- 条件は青色申告であること・連続して確定申告すること
- 赤字でも第四表(損失申告用)を期限内に提出する
純損失の繰越控除とは|赤字を翌年以降の節税に使う
繰越控除は、今年のマイナスを貯金しておいて、来年以降のプラスと相殺する 制度です。事業所得などで損失(赤字)が出た場合、その損失額を 翌年以後3年間にわたって繰り越せます。
例えば今年大きな設備投資で「300万円の赤字」が出て、翌年「300万円の黒字」が出たとします。通常は300万円に課税されますが、繰越控除を使えば「黒字300万 − 赤字300万 = 所得ゼロ」となり所得税がかかりません。赤字は失敗ではなく、将来の税金を減らす「前払いチケット」 のようなものです。
青色申告と白色申告の決定的な違い
この制度を使うには 「青色申告」 であることが条件です。
| 申告区分 | 繰越控除の適用 | 条件・対象 |
|---|---|---|
| 青色申告 | ◎(全額OK) | 事業所得などの損失すべてを3年間繰り越せる |
| 白色申告 | △(ほぼ不可) | 変動所得(漁業・原稿料など)や被災事業用資産の損失に限定 |
白色申告では一般的なビジネスの赤字は繰り越せません。一般的なフリーランス・副業が赤字の恩恵を受けるには青色申告が必須 です。
手続きの要件
- 赤字の出た年に、確定申告書(損失申告)を期限内に提出する
- その後も連続して確定申告書を提出し続ける
「今年は赤字だから申告して、来年は利益が出ないから申告しない」という飛び飛びの申告では権利を失います。毎年連続して出し続けること が条件です。
純損失の繰戻し還付とは|去年払った税金を取り戻す
繰越控除が「未来の節税」なら、繰戻し還付は 「過去の税金の返金」 です。前年は黒字で税金を納めたが今年は大赤字、という時に 今年の赤字を前年の黒字と相殺し、納めすぎた税金を返してもらえます。
還付額のイメージは「(前年の所得税額)−(今年の赤字を引いて再計算した税額)=還付される現金」です。
適用要件と注意点
- 青色申告者であること(前年も今年も青色申告である必要がある)
- 確定申告書を提出期限内に提出すること
- 同時に「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出すること
注意点として、繰戻し還付を請求すると還付の正当性を確認するための調査が行われる確率が上がるとされます。また、住民税にはこの繰戻し制度はありません(住民税は繰越控除のみ)。手元のキャッシュが急ぎ必要な状況では有効な手段です。
【シミュレーション】赤字申告でどれくらい得する?
モデルケース:1年目(昨年)黒字400万円(所得税約37万円納税済)/2年目(今年)赤字▲300万円/3年目(来年)黒字500万円(予定)
| パターン | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 3年間の税金合計 |
|---|---|---|---|---|
| 何もしない(白色など) | 37万円納税 | 0円(赤字切り捨て) | 500万円に課税(約57万円) | 約94万円 |
| 繰越控除を使う | 37万円納税 | 赤字300万を繰越 | 200万円に課税(約10万円) | 約47万円 |
約47万円もの差 が生まれます。確定申告書を1枚出すか出さないかで、これだけ変わります。
赤字でも確定申告をする手順
- 帳簿を正確につける:赤字を証明するには売上と経費の正確な記録が必要。領収書・請求書を整理し会計ソフトに入力
- 確定申告書第四表(損失申告用)を作成:第一表・第二表に加え第四表を作成し、損失額・翌年へ繰り越す金額を記入
- 期限内に提出:繰越控除・繰戻し還付は原則として提出期限内(通常3月15日まで)の申告が必要
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よくある質問
Q1. 副業の赤字(雑所得)も繰越できますか?
「雑所得」の赤字は、他の所得との損益通算も繰越控除もできません。対象は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」などで発生した損失です。副業でも規模や継続性があり「事業所得」として認められれば対象になります。
Q2. 3年経っても赤字が消しきれない場合は?
繰越期間は最長3年間です。3年経過しても相殺しきれなかった損失は切り捨てとなり消滅します。早めに黒字化して相殺するか、繰戻し還付も併せて検討しましょう。
Q3. 赤字申告をすると銀行融資に影響しますか?
赤字決算書を出すことになるため、融資の審査は厳しくなる傾向があります。一方で繰戻し還付で手元資金を厚くすること自体は経営判断としてプラスに働くこともあります。資金調達の予定がある場合は税理士に相談しましょう。
Q4. 繰越控除と繰戻し還付はどちらを使うべきですか?
将来の黒字が見込めるなら繰越控除、前年に税金を納めていて今すぐ手元資金が欲しいなら繰戻し還付が向きます。状況により使い分けます。いずれも青色申告と期限内申告が条件です。
まとめ|赤字の年こそ確定申告が節税になる
- 純損失の繰越控除:今年の赤字を3年間繰り越し、将来の黒字と相殺できる
- 純損失の繰戻し還付:前年の黒字と相殺し、払った税金を現金で取り戻せる
- 必須条件は青色申告であること・連続して確定申告すること
- 赤字は放置すれば損失だが、申告すれば将来の利益を守る資産に変わる
「赤字だから申告しなくていい」という考えは捨てて、まずは今の赤字額を正確に把握することから始めましょう。第四表の作成や繰越処理は会計ソフトで自動化できます。
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免責事項
※本記事は2026年6月時点の公開情報・国税庁公式をもとにした整理です。シミュレーションは一定の前提による概算で、税額は所得・控除等で変わります。税制は改正されることがあり、繰越控除・繰戻し還付の適用は個別事情で異なります。具体的な税務判断は税理士または所轄の税務署へご相談ください。

