個人事業主の交際費に法律上の上限はありません。年800万円・飲食費50%・1人1万円の基準は租税特別措置法61条の4で「法人が」支出する交際費だけに適用され、個人事業主の交際費は所得税法37条・45条の「事業に必要か・家事費と区分できるか」で決まります。
この記事でわかること
- 個人事業主の交際費に上限がない根拠と、代わりに何で判定されるかを条文で
- 法人の800万円・50%・1人1万円の基準が個人に当てはまらない理由と、目安として使うときの注意
- 取引先との会食・家族との食事・一人飯・ゴルフ・お中元・香典など20場面の判定表(経費可否×勘定科目×残す証拠)
- 「売上の何%まで」「平均いくら」に統計がないこと、代わりに税務調査で見られる3つの観点
- 領収書の裏書・インボイスの1万円未満の少額特例・電子取引データの保存と保存年数
- 仕訳4本と、青色申告決算書・収支内訳書の「接待交際費」欄の書き方・青色と白色の差
公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.2210 必要経費の知識/No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算/No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存/所得税基本通達45-1・45-2(家事関連費)/所得税法 第37条・第45条・第56条(e-Gov法令検索)/所得税法施行令 第96条(e-Gov法令検索)/租税特別措置法 第61条の4(e-Gov法令検索)(2026年9月閲覧。税制は改正されるため最新は国税庁でご確認ください)
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結論を先に書きます
個人事業主の交際費は、金額の上限で切られる制度になっていません。判定の軸は2つです。その支出が事業の収入を得るために必要だったか、そして生活費(家事費)と混ざっていないか。
法人には「年800万円まで」「飲食費の50%」「1人あたり1万円以下は交際費から外す」という細かい基準があります。検索で出てくる数字の多くはこの法人のルールで、個人事業主の所得税には一つも適用がありません。
この記事の要点
- 個人事業主の交際費は所得税法37条(必要経費)と45条(家事関連費)で判定。金額の上限はない
- 800万円・50%・1人1万円は租税特別措置法61条の4=法人だけの規定
- 個人では交際費も会議費も全額が必要経費。科目分けで税額は変わらず、分ける目的は帳簿の説明力
- 家族との食事・一人の昼食は原則家事費。相手が取引先か、事業の話が目的かで決まる
- 「売上の3%」「平均月1万円」に国税庁の統計はない。見られるのは相手・目的・頻度の記録
- 領収書の裏に相手先・人数・目的。1万円未満は帳簿のみで仕入税額控除(2029年9月30日まで)
関連: 個人事業主が経費にできるもの一覧(勘定科目18項目と家事按分)
個人事業主の交際費とは?上限がない理由を所得税法の条文で確認する
個人事業主の交際費とは、取引先など事業に関係する相手への接待・供応・贈答のために支出した費用で、必要経費に入る部分をいいます。上限がない理由は、所得税法に交際費を制限する条文が存在しないからです。
所得税法37条:収入を得るために必要な費用は経費
必要経費の範囲を決めているのは所得税法37条です。総収入金額を得るために直接要した費用と、業務について生じた販売費・一般管理費が必要経費になると定めています(所得税法第37条)。
取引先との会食や手土産は、この「業務について生じた費用」に当たります。条文に金額の制限はなく、仕事のための支出であれば全額が経費 です。
所得税法45条と施行令96条:家事費と混ざった部分は経費にならない
一方で、生活費(家事上の経費)とそれに関連する経費は必要経費に入りません(所得税法45条1項1号)。交際費で問題になるのはこちらです。飲食や贈答は、生活の中でも同じ行為をするからです。
家事と仕事の両方にかかわる支出を「家事関連費」と呼び、施行令96条が経費に入れられる部分を2つ定めています(所得税法施行令第96条)。
| 号 | 対象 | 経費に入る部分 |
|---|---|---|
| 1号 | 白色・青色とも | 支出の主たる部分が業務に必要で、かつ必要な部分を明らかに区分できる場合の、その部分 |
| 2号 | 青色申告者のみ | 取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要だったことが明らかにされる部分 |
「主たる部分」は業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定します。ただし、50%以下でも必要な部分を明らかに区分できれば、その金額を経費に入れて差し支えないとされています(所得税基本通達45-2)。
判定は業務の内容・経費の内容・家族構成などを総合して行います(同通達45-1)。「上限いくら」ではなく「この1回が仕事だったと記録で説明できるか」 が個人事業主の交際費の判定です。
個人事業主の交際費が経費になるかを決める順番
- その支出は、事業の収入を得るためのものか(所得税法37条)
- 相手が取引先・見込み客・外注先事業の支出全額が必要経費の候補。金額の上限はない
- 家族・友人だけ/自分一人家事費所得税法45条で必要経費に入らない
- 仕事と私用が混ざっている家事関連費(施行令96条)業務に必要な部分を人数や目的で区分。青色は取引記録で直接必要な部分を切り出せる
判定に使うのは「相手・目的・記録」。法人の800万円・1万円基準はこの流れに出てこない
図:個人事業主の交際費は「事業の支出か→家事費と混ざっていないか」の2段で決まる
法人の800万円・50%・1人1万円基準は個人事業主に適用されない
検索で目にする「交際費は800万円まで」「1人1万円以下なら会議費」は、租税特別措置法61条の4の話です。条文の主語は「法人が」で、個人事業主は対象に含まれていません(租税特別措置法第61条の4)。
法人と個人事業主の交際費ルールの違い(2026年9月時点)
| 項目 | 法人(措法61条の4) | 個人事業主(所得税法) |
|---|---|---|
| 原則 | 交際費等は全額損金不算入 | 事業に必要なら全額必要経費 |
| 資本金1億円以下の特例 | 年800万円まで、または接待飲食費の50%まで損金 | 該当なし |
| 1人あたりの飲食費基準 | 1万円以下は交際費等から除外(2024年4月1日以後。3月31日以前は5,000円) | 該当なし。金額基準は存在しない |
| 判定の軸 | 金額と支出の性質 | 事業関連性と家事費との区分 |
| 期限 | 2027年3月31日までに開始する事業年度 | 期限の概念なし |
法人の1人1万円基準は、参加者の氏名・人数・金額・店名などを書いた書類を保存している場合に限って使えます(国税庁 No.5265)。基準金額は2024年(令和6年)4月1日以後の支出から5,000円が1万円に上がりました。
個人事業主が1万円基準を「目安」として使う意味
個人事業主に金額基準はないので、1人3万円の会食でも事業に必要なら全額が経費です。逆に1人800円のカフェ代でも、相手が友人なら経費にはなりません。
それでも1万円という数字は使いどころがあります。法人の税務では「1人1万円以下の飲食は接待でなく会議・打ち合わせの範囲」と整理されているので、個人でも1人1万円以下の打ち合わせ飲食は会議費、それを超える接待は接待交際費 と分けておくと、帳簿を見た人に説明しやすくなります。税額は変わりません。
同じ1回の会食(取引先2人と自分・合計36,000円)
- 1人あたり
- 12,000円=1万円超
- 扱い
- 交際費等に含める
- 損金
- 年800万円の枠内、または50%(18,000円)
- 根拠
- 措法61条の4
- 1人あたり
- 基準なし
- 扱い
- 接待交際費(科目は任意)
- 必要経費
- 36,000円の全額
- 根拠
- 所得税法37条
個人は金額で切られない。切られるのは「相手が取引先か」「仕事の話が目的か」を説明できないとき
図:同じ会食でも法人は金額基準で損金が制限され、個人事業主は事業関連性だけで全額が必要経費になる
交際費と会議費の線引き|個人事業主はどう分けるか
個人事業主では、交際費も会議費も全額が必要経費なので、どちらの科目に入れても所得税の額は同じ です。分けるのは税金のためでなく、帳簿と決算書を見た人が支出の性格を読めるようにするためです。
個人事業主の飲食・贈答まわりの勘定科目
| 勘定科目 | 個人事業主での使い方 | 決算書の行 |
|---|---|---|
| 接待交際費 | 取引先との会食・接待・贈答・慶弔費 | 青色申告決算書・収支内訳書とも専用の行あり |
| 会議費 | 打ち合わせの飲食・会議室代・茶菓(1人1万円以下が目安) | 専用の行なし。空欄の行に科目名を書く |
| 福利厚生費 | 従業員のための慰安・食事補助。従業員がいない事業主本人には使えない | 専用の行あり |
| 広告宣伝費 | 不特定多数へのノベルティ・カレンダー配布 | 専用の行あり |
| 雑費 | 上のどれにも当たらない少額の支出 | 専用の行あり |
一人で仕事をしている個人事業主が「福利厚生費」で自分の食事を落とすことはできません。福利厚生費は従業員のための費用で、事業主本人は従業員ではないからです。
会議費に入れるときの条件
会議費として説明できるのは、打ち合わせが目的で飲食が付随している場合です。次の3つがそろっていれば、カフェでもレストランでも会議費で通ります。
- 相手が取引先・見込み客・外注先・共同で仕事をする同業者である
- 仕事の話(打ち合わせ・商談・企画)が目的で、飲食は場所代の性格である
- 議事メモ・チャットの記録・その後の受注や納品など、打ち合わせがあった痕跡が残っている
夜の会食で酒が入り、1人1万円を超えるようなら接待交際費に寄せておく方が説明は楽です。科目の判断で迷う時間より、相手先・目的をレシートの裏に書く時間 の方が後で効きます。
判定表|個人事業主の交際費になる支出・ならない支出20場面
「どこまで交際費に入るか」は場面で答えが変わります。よく迷う場面を、経費の可否・勘定科目・残す証拠の3列で並べました。
交際費・会議費の判定表(個人事業主・2026年9月時点)
| 場面 | 経費 | 勘定科目 | 残す証拠 |
|---|---|---|---|
| 取引先との会食(接待) | ○ | 接待交際費 | 領収書+相手先・人数・目的の裏書 |
| 取引先とのランチ打ち合わせ | ○ | 会議費 | 領収書+打ち合わせ内容のメモ |
| 自分一人の昼食・カフェ作業のコーヒー | × | 家事費(事業主貸) | ― |
| 家族との食事(仕事の話はなし) | × | 家事費 | ― |
| 取引先との会食に配偶者が同席 | △ | 人数で按分。取引先分のみ接待交際費 | 領収書+参加者の内訳 |
| 青色事業専従者の配偶者との業務打ち合わせの食事 | △ | 原則は家事費。外部の相手がいる場合のみ会議費 | 打ち合わせの記録 |
| 同業者の勉強会後の懇親会 | ○ | 接待交際費または会議費 | 勉強会の案内・懇親会費の領収書 |
| 同業者との情報交換の飲み会(仕事の紹介あり) | ○ | 接待交際費 | 相手の氏名と紹介案件のメモ |
| 友人との飲み会で仕事の話が出た | × | 家事費 | ― |
| 取引先とのゴルフのプレー代 | ○ | 接待交際費 | 領収書+同伴者名 |
| 自分のゴルフ練習・ゴルフ会員権 | × | 家事費 | ― |
| お中元・お歳暮(取引先へ) | ○ | 接待交際費 | 送付先リスト+購入明細 |
| 親戚・友人へのお中元 | × | 家事費 | ― |
| 取引先の慶弔(香典・祝儀・供花) | ○ | 接待交際費 | 出金伝票+案内状・会葬礼状 |
| 親族の葬儀の香典 | × | 家事費 | ― |
| クライアント訪問時の手土産 | ○ | 接待交際費 | 領収書+訪問先 |
| 取引先との二次会・キャバクラ | △ | 接待交際費(相手が取引先で接待の一環なら可) | 領収書+参加者。頻度が多いと家事費と見られやすい |
| 取引先を招いた食事会・周年パーティー | ○ | 接待交際費 | 招待者リスト・案内状 |
| オンライン会議中に自宅で飲んだコーヒー代 | × | 家事費 | ― |
| 取引先への商品券・ギフト券 | ○ | 接待交際費 | 購入明細+送付先 |
| 不特定多数へのノベルティ・カレンダー | ○ | 広告宣伝費 | 購入明細 |
| 有料セミナー後の名刺交換会の会費 | ○ | 接待交際費または会議費 | 参加費の領収書・案内 |
○=原則経費、△=条件付き、×=家事費。
家族との食事:所得税法56条と「相手が誰か」
家族との食事が経費にならないのは、相手が事業の取引先ではないからです。生計を一にする配偶者や親族へ事業から支払う対価は必要経費に入らないという規定もあります(所得税法第56条)。配偶者を青色事業専従者にしていても、2人だけの食事は家事費です。
取引先との会食に配偶者が同席した場合は、人数で分けます。4人で40,000円の会食に取引先2人・自分・配偶者なら、取引先2人と自分の3人分30,000円を接待交際費、配偶者の10,000円を事業主貸にする処理が説明しやすい形です。
一人飯:仕事中でも食事は生活費
外回りの合間の昼食や、カフェで作業したときのコーヒー代は、一人なら家事費です。食事は仕事をしていなくても取るものなので、事業の収入との直接の関係が説明できません。
宿泊を伴う出張でも、事業主本人の食事代そのものは家事費の扱いが原則です。事業主一人の日常の食事に当てはまる例外はありません。
ゴルフ・お中元・香典:相手と頻度
取引先とのゴルフのプレー代、取引先へのお中元・お歳暮、取引先の慶弔費は接待交際費です。判定を分けるのは金額でなく相手と頻度で、同じ相手と月に何度もゴルフに行く・売上に比べて贈答が多い と、家事費の混入を疑われます。
香典・祝儀は領収書が出ません。出金伝票に日付・相手先・金額・目的を書き、案内状や会葬礼状を一緒に保存すれば証拠になります。
飲食・贈答の支出を科目に分ける
- 飲食・贈答・交流にかかった支出
- 相手が取引先・見込み客・外注先接待・贈答・慶弔=接待交際費/打ち合わせ飲食=会議費
- 相手が同業者仕事の紹介・共同案件がある=接待交際費/ただの飲み会=家事費
- 相手が家族・友人家事費。取引先の会食に同席したときだけ人数で按分
- 自分一人家事費。出張中の食事も原則は同じ
- 相手が不特定多数ノベルティ・カレンダー=広告宣伝費
分岐は「相手が誰か」。金額はどの枝にも出てこない
図:個人事業主の交際費の判定は「相手が誰か」で枝が分かれ、金額の分岐はない
交際費の目安・割合・平均はある?「売上の3%」の正体と税務調査で見られる観点
「交際費は売上の3%まで」「個人事業主の交際費は月平均1万円」という数字を見かけますが、国税庁の公表資料に個人事業主の交際費の平均額や適正な割合を示したものはありません。所得税法にも割合の規定はなく、これらは出所を示さずに広まった数字です。
法人については国税庁の会社標本調査に交際費等の支出額の統計がありますが、法人の話です。個人事業主が自分の交際費を比べる公的な基準値は存在しません。
税務調査で交際費について見られる3つの観点
| 観点 | 調査で聞かれること | 答えられる記録 |
|---|---|---|
| 相手 | この会食は誰と行ったか。その人と取引はあるか | 領収書の裏書(氏名・会社名)、その後の請求書・受注記録 |
| 目的と頻度 | 何のための支出か。同じ店・同じ相手が続いていないか。土日・深夜・自宅近くが多くないか | 打ち合わせメモ、案件との対応、カレンダー |
| 家事費の混入 | 家族の分が入っていないか。一人の食事が混ざっていないか | 人数の記録、按分の計算、私用分を事業主貸にした仕訳 |
「売上に比べて多い」という見方はされますが、それは割合の上限に当たったからでなく、多い分だけ家事費が混ざっている可能性が高い と見られるからです。売上300万円のライターの交際費が年100万円なら、1件ずつ相手と目的を聞かれます。
否認されたらどうなるか
事業との関連が説明できない支出は、必要経費から外れて事業主貸に振り替えられます。その年の所得が増えるので、所得税・住民税・国民健康保険料が増え、修正申告に伴う過少申告加算税と延滞税がかかります。
交際費を減らす必要はありません。1回ごとに相手と目的を書き残す だけで、上の3観点はすべて答えられます。
証拠の残し方|領収書の裏書・インボイス・1万円未満の少額特例・電子取引
個人事業主の交際費で効くのは、金額の管理より支出ごとの記録です。法人向けの制度で求められる項目をそのまま使うと、そろえるものがはっきりします。
領収書に書き足す5項目
法人が1人1万円基準を使うときに保存を求められる項目は、個人事業主が交際費を説明するときにもそのまま使えます(国税庁 No.5265)。
- 飲食があった年月日
- 参加した取引先などの氏名・名称と、自分との関係
- 参加した人数
- 支払った金額と、店の名称・所在地
- その他、事業のための飲食だったことがわかる事項(目的・案件名)
領収書の裏に「○○社△△氏・計3名・新規案件の打ち合わせ」と1行書けば5項目が埋まります。会計ソフトのレシート撮影機能なら、備考欄に同じ内容を入れておく形です。
領収書が出ない支出:出金伝票と添付書類
| 支出 | 代わりに残すもの |
|---|---|
| 香典・祝儀 | 出金伝票(日付・相手先・金額・目的)+案内状・会葬礼状・招待状 |
| 割り勘で自分が代表して払っていない会費 | 幹事からの集金メッセージ・振込記録・案内 |
| 現金で払って領収書をもらい忘れた飲食 | 出金伝票+店名・日付・参加者のメモ。頻発は避ける |
| 自動販売機・交通系ICで払った茶菓 | 利用履歴の印字・出金伝票 |
消費税の課税事業者:インボイスと1万円未満の少額特例
消費税の課税事業者が会食代の消費税を仕入税額控除するには、原則として飲食店の適格請求書(インボイス)の保存が要ります。飲食店のレシートは簡易インボイスでよく、登録番号・税率ごとの金額・消費税額が印字されていれば足ります。
基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間5,000万円以下)の事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの税込1万円未満の課税仕入れなら、帳簿の記載だけで仕入税額控除 ができます(国税庁 No.6496)。1人3,000円のランチ打ち合わせや手土産の多くはこの範囲に入ります。
免税事業者と2割特例を使う事業者には、仕入税額控除の場面がないのでインボイスの有無は関係ありません。所得税の必要経費の判定はインボイスの有無で変わらず、登録番号のない店の領収書でも経費にできます。
電子取引のデータはデータのまま保存
ネット予約サイトの決済メール、通販で買ったお中元の注文確認メール、電子領収書は「電子取引」に当たり、2024年1月以後はデータのまま保存する義務があります(国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト)。印刷して紙だけを残す方法は認められません。PDFをフォルダに保存し、日付・金額・取引先で検索できるようにしておきます。
保存年数(青色・白色)
| 書類 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・経費帳) | 7年 | 7年(収入金額・必要経費を記載した法定帳簿) |
| 領収書・請求書・出金伝票 | 現金預金取引等関係書類は7年(前々年分所得300万円以下は5年)、その他の書類は5年 | 5年 |
| 交際費の裏書・参加者メモ | 領収書と一体で保存(同上) | 領収書と一体で保存(5年) |
出典: 国税庁 No.2070 青色申告制度/No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
レシートを撮影して取引先名と目的を入れれば、接待交際費と会議費の振り分け、私用分の事業主貸の切り出し、電子取引データの保存要件まで一続きで満たせます。年末に領収書の束を裏返して思い出す作業がなくなり、決算書の接待交際費欄は集計済みの数字が入ります。個人事業主向けのプランを30日間試せます。
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仕訳例と青色申告決算書・収支内訳書の「接待交際費」欄の書き方
青色申告・事業用口座とカードで統一します。私用のカードや現金で払ったときは事業主借で受けます。
仕訳例1:取引先2人との会食36,000円を事業用カードで支払い
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 接待交際費 | 36,000円 | 未払金 | 36,000円 |
摘要に「○○社△△氏・□□氏・計3名・新規案件の打ち合わせ後の会食」と書きます。翌月のカード引き落としで未払金を普通預金と相殺します。
仕訳例2:取引先2人+自分+配偶者の会食40,000円を私用カードで支払い
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 接待交際費 | 30,000円 | 事業主借 | 40,000円 |
| 事業主貸 | 10,000円 |
配偶者の1人分を人数で切り出して事業主貸にします。摘要に「4名のうち配偶者1名分を家事費として除外」と書いておくと、按分の根拠が帳簿に残ります。
仕訳例3:取引先の葬儀に香典10,000円を現金で持参
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 接待交際費 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
領収書はないので出金伝票を起こし、会葬礼状を添付します。香典に消費税はかからないので、課税事業者は対象外(不課税)で処理します。
仕訳例4:取引先とのカフェ打ち合わせ1,400円を現金で支払い
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 会議費 | 1,400円 | 現金 | 1,400円 |
税込1万円未満なので、課税事業者でも少額特例の期間中は帳簿の記載だけで仕入税額控除ができます。レシートは所得税の証拠として保存します。
決算書のどの行に書くか
| 様式 | 接待交際費 | 会議費 | 家事費を除いた計算 |
|---|---|---|---|
| 青色申告決算書(一般用) | 経費欄に専用の行あり | 空欄の行に「会議費」と書いて金額を記入 | 施行令96条2号=取引の記録に基づいて直接必要な部分を切り出せる |
| 収支内訳書(白色・一般用) | 経費欄に専用の行あり | 空欄の行に科目名を書いて記入 | 施行令96条1号=主たる部分が業務用で区分できる部分。通達45-2但書で50%以下でも区分できれば可 |
青色と白色で決算書の行は同じですが、家事関連費を切り出す根拠の条文が違います。青色申告者は取引の記録に基づいて「この1回は仕事だった」と個別に説明できる部分を経費にできる規定があり(施行令96条2号)、交際費のように1回ごとに性格が違う支出と相性がよい仕組みです。白色でも通達45-2の但書で区分できれば経費に入りますが、記録の重みが増します。
決算書全体の記入は青色申告決算書の書き方で整理しています。交際費以外の経費の判断は副業会社員が間違えやすい経費の判断10選、自宅や車・スマホ・パソコンの家事按分は自宅家賃・自動車税・車検・スマホ代・パソコン代の記事で同じ考え方をまとめました。
よくある質問
Q1. 個人事業主の交際費に上限はありますか?
ありません。所得税法には交際費の金額を制限する条文がなく、事業に必要な支出なら全額が必要経費です(所得税法37条)。年800万円・飲食費50%は租税特別措置法61条の4の法人向け規定で、個人事業主には適用されません。制限されるのは、家事費と区分できない部分です(同法45条・施行令96条)。
Q2. 交際費は売上の何%までなら大丈夫ですか?
割合の基準はありません。「3%」「6〜7%」という数字は国税庁の資料にも所得税法にもなく、出所のない目安です。売上に比べて交際費が多いと1件ずつ相手と目的を聞かれますが、記録があれば割合に関係なく経費です。逆に少額でも相手が友人なら経費にはなりません。
Q3. 1人1万円以下の飲食は会議費にしないといけませんか?
決まりはありません。1人1万円(2024年3月31日以前は5,000円)の基準は法人の交際費課税の規定で、個人事業主には金額基準がありません。個人では会議費でも接待交際費でも全額が必要経費で税額は同じです。打ち合わせが目的の飲食を会議費、接待を接待交際費と分けておくと帳簿の説明がしやすくなります。
Q4. 家族と食事した費用は交際費になりますか?
なりません。家族は事業の取引先ではないので家事費です。配偶者が青色事業専従者でも、2人だけの食事は経費に入りません。取引先との会食に配偶者が同席した場合は、人数で分けて取引先と自分の分だけを接待交際費にし、配偶者の分は事業主貸にします。
Q5. 一人で食べた昼食や仕事中のコーヒー代は経費になりますか?
なりません。一人の食事は仕事をしていなくても取るものなので、事業の収入との直接の関係を説明できず家事費になります。カフェで作業したときの飲み物代も同じです。取引先と打ち合わせをしたときの飲食は会議費として経費にできます。
Q6. 香典やご祝儀は領収書がありませんが経費にできますか?
できます。相手が取引先なら接待交際費です。出金伝票に日付・相手先・金額・目的を書き、案内状・会葬礼状・招待状を一緒に保存すれば証拠になります。親族や友人の慶弔は家事費です。香典・祝儀に消費税はかからないので、課税事業者は不課税で処理します。
まとめ|個人事業主の交際費は金額でなく「相手・目的・記録」で決まる
個人事業主の交際費は、上限額を探す制度になっていません。事業の相手との支出かどうか、家事費と分けて記録できているかで決まります。
この記事のまとめ
- 個人事業主の交際費に上限はない。判定は所得税法37条(必要経費)と45条・施行令96条(家事関連費)
- 800万円・50%・1人1万円は法人だけの基準(措法61条の4)。個人には金額基準がない
- 個人では交際費・会議費とも全額必要経費。1人1万円以下の打ち合わせ飲食を会議費に寄せると説明が楽になる
- 家族との食事・一人飯は家事費。取引先の会食に家族が同席したら人数で按分
- 「売上の3%」「平均月1万円」に統計はない。調査で見られるのは相手・目的と頻度・家事費の混入
- 領収書の裏に相手先・人数・目的。1万円未満は帳簿のみで仕入税額控除(2029年9月30日まで)。電子取引はデータで保存
交際費を減らす必要はなく、1回ごとに相手と目的を残せば全額が経費です。会食のたびにレシートの裏へ1行書く習慣が、税務調査の3観点への答えになります。
接待交際費と会議費の振り分け、家族分の事業主貸の切り出し、香典の出金伝票、電子領収書の保存を、レシート撮影と備考欄の入力だけで済ませられます。青色申告の65万円控除に必要な複式簿記も、仕訳の知識なしで進められるプランを30日間試してから決められます。
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- 副業会社員の確定申告・初心者が間違えやすい経費の判断10選
- 個人事業主のパソコン代は経費になる?10万・20万・40万円の壁と按分
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- 青色申告決算書の書き方|4つの様式と記入例
免責事項
※本記事は2026年9月時点の公開情報・国税庁公式をもとにした整理です。筆者は税理士ではなく、フリーランスとして自分の申告を行ってきた一当事者です。交際費の事業関連性の判定・家事関連費の区分・勘定科目の選択・消費税の取り扱いは、事業内容や改正により異なります。個別の税務判断は、所轄の税務署または税理士など有資格者へご確認ください。

