この記事でわかること
- 経費になるかを分けるたった1つの判断軸(金額ではなく事業関連性)
- 個人事業主がよく使う勘定科目18項目の一覧表(科目・内容・具体例)
- 経費にできないもの・グレーゾーンの線引き
- 自宅兼事務所の費用を分ける家事按分の割合の決め方
- 青色申告決算書での経費の書き方と保存ルール
公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.2210 必要経費の知識/No.2100 減価償却のあらまし(2026年6月閲覧。税制は改正されるため最新は国税庁でご確認ください)
結論を先に書きます
経費になるかどうかは、金額の大小では決まりません。「その支出が事業の売上を得るために必要だったか」 という事業関連性だけが判断軸です(国税庁 No.2210)。
経費に「上限金額」という決まりはありません。ただし、第三者に説明できない私的な支出は対象外です。自宅や車のように事業とプライベートが混ざる費用は、合理的な割合で按分した分だけ を経費にします。
- 経費の判断軸は事業関連性。金額の上限ルールはない
- 勘定科目は毎年同じ基準で使う。迷ったら「内容が分かる科目」に寄せる
- 自宅・車・通信費は家事按分で事業使用分だけを経費化
- レシート等の証憑は原則7年保存。記録が経費を守る
経費の大原則|「事業に必要か」だけで判断する
最初に押さえるべきは、経費になる・ならないを分ける軸は1つだという点です。それは 「事業の売上を得るために直接必要だったか」 です。
国税庁も、必要経費を「総収入金額を得るために直接要した費用」と「業務上の費用」と整理しています(国税庁 No.2210)。高額だからダメ、少額だからOK、という金額基準ではありません。
判断に迷ったら、次の3つを自分に問い直すと整理できます。
- 事業との関連を説明できるか:なぜその支出が売上につながるかを一言で言えるか
- 客観的な証憑があるか:レシート・請求書・契約書など第三者が確認できる記録があるか
- プライベートと混ざっていないか:混ざるなら全額ではなく按分する
逆に言うと、この3つを満たせない支出は、金額が小さくても経費にできません。経費の本質は「領収書の枚数」ではなく「事業との結びつきを説明できること」です。
個人事業主が経費にできるもの一覧(勘定科目18項目)
実際の記帳では、支出を「勘定科目」というラベルに振り分けます。どの科目を使うかに厳密な正解はありませんが、内容が一目で分かる科目に寄せるのが基本です。
よく使う勘定科目と具体例
| 勘定科目 | 主な内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 租税公課 | 事業に関する税金・公的負担 | 個人事業税・固定資産税・自動車税・印紙税 |
| 荷造運賃 | 商品発送の運送料・梱包材 | 宅配便・段ボール・緩衝材 |
| 水道光熱費 | 事業所の電気・ガス・水道 | 電気代・ガス代・水道代 |
| 旅費交通費 | 事業の移動・出張費 | 電車代・バス代・宿泊費・ガソリン代 |
| 通信費 | 事業用の通信費 | ネット回線・携帯電話・切手・サーバー代 |
| 広告宣伝費 | 不特定多数への宣伝 | Web広告・チラシ・名刺・看板 |
| 接待交際費 | 取引先との関係維持費 | 打ち合わせの飲食・手土産・慶弔費 |
| 損害保険料 | 事業用資産の保険 | 火災保険・事業用車の自動車保険 |
| 修繕費 | 事業用資産の維持・修理 | PC修理・機材メンテ・原状回復費 |
| 消耗品費 | 短期間で使う物品 | 文房具・10万円未満の備品・ソフト |
| 減価償却費 | 高額資産の期間配分 | 10万円以上のPC・車・機械 |
| 福利厚生費 | 従業員のための支出 | 従業員の健康診断・慶弔費 |
| 給料賃金 | 従業員への給与 | 従業員の給与・賞与 |
| 外注工賃 | 外部への業務委託 | サイト制作・デザイン・原稿の委託費 |
| 支払手数料 | 各種手数料 | 振込手数料・販売手数料・専門家報酬 |
| 地代家賃 | 事業用の賃借料 | 事務所家賃・駐車場代・レンタルスペース |
| 新聞図書費 | 情報収集の費用 | 業界書籍・専門誌・有料記事 |
| 雑費 | 少額でどの科目にも入らない費用 | 少額で重要性の低い費用 |
「雑費」は便利ですが、何でも放り込むと内訳が見えなくなります。雑費は経費全体の1割以内を目安 に抑え、繰り返し出る支出は専用の科目を作るのがおすすめです。科目は事業に合わせて追加してかまいません。
経費にできないもの・グレーゾーンの線引き
「これは経費になりそう」と思われがちでも、税務上は経費にできない支出があります。混同しやすいものを整理します。
- 所得税・住民税の本体:事業主個人にかかる税金は経費でなく、所得から差し引く性質のもの
- 国民健康保険・国民年金:経費ではなく「社会保険料控除」で所得控除する
- 事業主自身の給与・福利厚生:事業主本人への給料や健康診断は原則経費にならない
- 生計を一にする家族への支払い:青色事業専従者給与などの届出がない限り対象外
- 完全に私的な支出:家族との外食・趣味・私服など
判断が割れやすいのが「グレーゾーン」です。スーツ、自宅での作業に使うカフェ代、取引先と兼ねた会食などは、事業との関連を説明できる範囲 でのみ計上します。
迷ったら「税務署に聞かれて、事業のためだと胸を張って説明できるか」を基準にしてください。説明が苦しいものは、按分するか計上しないのが安全です。具体的な失敗例は個人事業主1年目の青色申告ミス10選でも扱っています。
家事按分の考え方|自宅・車・通信費を分ける
自宅を仕事場にしている場合、家賃や電気代を全額経費にはできません。事業とプライベートが混ざる「家事関連費」は、事業に使った割合だけ を経費にします。これが家事按分です。
按分のポイントは「割合の根拠を第三者に説明できること」です。国税庁も、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に必要経費にできるとしています。割合は次のような客観的な基準で決めます。
費目別・家事按分の基準の例
| 費目 | よく使う按分基準 | 考え方 |
|---|---|---|
| 家賃・地代家賃 | 床面積の割合 | 仕事部屋の面積 ÷ 自宅全体の面積 |
| 電気・水道光熱費 | 使用時間・コンセント数 | 事業に使う時間 ÷ 24時間 など |
| 通信費(ネット・携帯) | 使用時間・日数 | 平日の業務利用割合を時間で見積もる |
| 自動車・ガソリン代 | 走行距離・使用日数 | 事業の走行距離 ÷ 総走行距離 |
例えば、50㎡の自宅のうち10㎡を仕事部屋にしているなら、家賃の按分割合は20%です。月10万円の家賃なら、毎月2万円を地代家賃として経費にできます。
按分割合に明確な上限はありませんが、生活実態とかけ離れた高い割合は説明が苦しくなります。使用時間や面積をメモやスクリーンショットで残しておくと、後で根拠を示せます。
勘定科目を使うときの実務ルール
科目の振り分けで失敗しないために、記帳の実務でよく言われるルールをまとめます。
- 毎年同じ基準で振り分ける:去年「通信費」にした支出を今年「雑費」にしない。継続性が信頼性につながる
- 科目は事業に合わせて追加してよい:「研修費」「支払手数料」など、自分の事業で頻出する支出は専用科目を作る
- 雑費を多用しない:内訳が見えなくなるため、繰り返す支出は独立科目へ
- 証憑を必ず残す:レシート・請求書・通帳の記録。青色申告は原則7年保存
科目選びに神経質になりすぎる必要はありません。税額は「どの科目か」ではなく「経費の合計額」で決まる ためです。大切なのは、漏れなく計上し、根拠を残し、毎年ぶれない基準で続けることです。
クラウド会計ソフトを使うと、銀行・カードの明細から科目を自動で提案してくれるため、振り分けの負担は大きく減ります。ソフトの選び方はfreee vs マネーフォワード徹底比較で詳しく整理しています。
青色申告決算書での経費の書き方
集計した経費は、確定申告で「青色申告決算書(白色は収支内訳書)」に記入します。流れは次の通りです。
- 日々の取引を帳簿に記帳:売上と経費を勘定科目ごとに入力する
- 科目ごとに年間集計:通信費はいくら、地代家賃はいくらと合計を出す
- 損益計算書に転記:決算書の各科目欄に集計額を記入。家事按分は按分後の金額を入れる
- 所得を計算:売上 − 経費 − 各種控除=所得。ここに税率がかかる
10万円以上の備品は、その年に全額を経費にできず「減価償却」 で複数年に分けます(国税庁 No.2100)。ただし青色申告者は、30万円未満の資産を年間合計300万円まで一括経費にできる「少額減価償却資産の特例」を使えます(適用期限や金額要件は改正があるため最新は国税庁で確認)。
この特例は青色申告の大きな利点の1つです。青色のメリット全体は青色申告のメリット・デメリットで整理しています。
よくある質問
Q1. 経費に上限金額はありますか?
金額そのものに上限はありません。判断軸は「事業の売上を得るために必要だったか」という事業関連性です。ただし、売上に対して経費が極端に多いと内容を確認されやすくなるため、各支出の事業目的を説明できる記録を残しておくことが大切です。
Q2. レシートがない電車代や自販機代はどうしますか?
公共交通機関の運賃など領収書が出ない支出は、出金伝票や利用履歴のメモで記録を残せば計上できます。日付・行き先・目的・金額を残しておくと、後から事業関連性を説明しやすくなります。交通系ICの利用履歴も有効な記録です。
Q3. 10万円以上のパソコンは経費にできますか?
できますが、その年に全額ではなく減価償却で複数年に分けるのが原則です。青色申告者は「少額減価償却資産の特例」で30万円未満なら一括経費にできる場合があります。金額要件や適用期限は改正されることがあるため、購入前に最新の条件を国税庁で確認してください。
Q4. 家事按分は何割までなら認められますか?
明確な上限割合はありません。床面積・使用時間・走行距離など、客観的に説明できる基準で算出した割合であれば計上できます。逆に、生活実態とかけ離れた高い割合は説明が難しくなります。按分の根拠(間取り図・使用時間メモなど)を残しておきましょう。
Q5. 国民健康保険や国民年金は経費になりますか?
経費にはなりません。これらは「社会保険料控除」として、経費とは別枠で所得から差し引きます。経費(事業の支出)と所得控除(個人の負担)は性質が違うため、決算書の経費欄ではなく確定申告書の所得控除欄に記入します。
Q6. 領収書の宛名は屋号でも大丈夫ですか?
屋号でも問題ありません。重要なのは宛名の表記そのものより、その支出が事業に関連していると説明できることです。宛名なし(上様)のレシートでも、内容と金額が分かり事業関連性を示せれば計上できます。記録の整合性を保つことを優先しましょう。
Q7. プライベートと事業で両方使うものはどう扱いますか?
家事按分で処理します。自宅家賃・電気代・携帯電話・自動車など、事業とプライベートが混ざるものは、事業で使った割合だけを経費にします。割合は面積や使用時間など合理的な基準で決め、根拠を残しておくのが基本です。
まとめ|経費は「説明できる事業関連性」がすべて
経費の判断は、突き詰めると1つの問いに収れんします。
- 経費の判断軸は事業関連性。金額の上限ルールはない
- 勘定科目は内容が分かる科目に寄せ、毎年同じ基準で振り分ける
- 自宅・車・通信費は合理的な割合で家事按分し、根拠を残す
- 証憑は原則7年保存。記録が経費を守る最大の防御になる
「事業のために必要で、それを説明できる記録がある」。この2つを満たす支出だけを、ぶれない基準で積み上げていけば、経費の判断で迷うことは少なくなります。
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免責事項
※本記事は2026年6月時点の公開情報・国税庁公式をもとにした整理です。勘定科目の分類・家事按分の割合・減価償却や特例の要件は、事業内容や改正により異なります。個別の経費判断・按分の妥当性については、所轄の税務署または税理士など有資格者へご確認ください。

