青色申告の取りやめ届出書は、青色申告をやめて白色申告に戻すために税務署へ出す届出書です。提出期限は取りやめる年の翌年3月15日まで、手数料は無料。書き方・提出先、白色に戻すと失う5つの特典、再び青色に戻す1年ルールまで国税庁の根拠つきで整理します。
この記事でわかること
- 青色申告の取りやめ届出書の書き方(記入例)と提出先・費用
- 提出期限は「取りやめる年の翌年3月15日まで」という時間軸の意味
- 「取りやめ」「取り消し」「廃業」の違い(自主か強制か)
- 白色に戻すと失う5つの特典(65万円控除・純損失3年繰越・専従者給与など)
- いったんやめて再び青色に戻す場合の1年ルールと、取りやめずに負担を下げる選択肢
公的情報源: 国税庁 A1-9 所得税の青色申告の取りやめ手続/タックスアンサー No.2070 青色申告制度(2026年7月閲覧)
「帳簿付けが大変」が取りやめの理由なら、先に読んでほしい選択肢があります。会計ソフトなら簿記ゼロでも記帳が回り、青色をやめずに済むケースがあります。
結論を先に書きます
青色申告の取りやめ届出書は、「取りやめる年の翌年3月15日まで」 に納税地の税務署へ出せば、その年分から白色申告に戻せます。手数料はかかりません。ただし戻すと 最大65万円の特別控除・純損失の3年繰越・専従者給与 などの特典を一斉に失います。さらに、いったん取りやめると 届出書を出した日から1年以内は青色の再承認が却下されうる ため、「来年また青色に戻す」が効きにくい点に注意が必要です。個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。
- 提出期限は取りやめる年の翌年3月15日まで。1枚・無料で、納税地の所轄税務署へ提出する
- 「取りやめ」は事業は続けて白色に戻す自主手続き。事業自体をやめる「廃業」とは別物
- 白色に戻すと65万円控除・純損失3年繰越・専従者給与全額・少額減価償却の特例などを失う
- 再び青色にするには取りやめ届の提出日から1年を空ける必要があり、実務上は翌々年分からの再開になりやすい
関連: 青色申告のメリット・デメリット(白色との違いを実額で整理)
青色申告の取りやめ届出書とは(いつ必要になるか)
青色申告の取りやめ届出書とは、青色申告をやめて白色申告に戻すことを税務署に知らせる届出書 です。正式名称は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」で、所得税法151条に基づく手続きです(国税庁 A1-9・2026年7月閲覧)。
いったん青色申告の承認を受けても、あとから「やっぱり白色でいい」と自主的に戻すことができます。その意思表示がこの届出書です。提出しないまま白色の申告書を出しても、税務署の記録上は青色申告者のまま なので、控除や帳簿の要件で整合が取れなくなります。戻すなら必ず届出書を出す、と理解しておくのが安全です。
取りやめ届出書が必要になる主な場面は次のとおりです。
- 記帳の負担を減らしたい:複式簿記が続かず、白色の簡易帳簿に戻したい
- 所得が小さくメリットが薄い:節税効果よりソフト代・手間が上回ると感じる
- 事業を縮小・休止する:申告の手間だけを軽くしたい(事業は続ける)
- 廃業する:事業自体をやめる(この場合も廃業届とは別に取りやめ届が要る)
なお、「記帳が大変だから」という理由なら、白色に戻す以外の道もあります。後半の「取りやめずに負担を下げる選択肢」で詳しく扱います。
提出期限・提出先・費用
取りやめ届出書の提出期限は、青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日まで です(国税庁 A1-9)。ここが最初のつまずきポイントで、「やめたい年」ではなく「やめたい年の“翌年”の確定申告期限まで」に出す、という時間軸になります。
たとえば2026年分から白色に戻したいなら、2027年3月15日までに提出します。この日は2026年分の確定申告期限と同じで、取りやめ届と白色の確定申告書を同じタイミングで出す 形になるのが実務上の一般的な流れです。
取りやめ届出書の提出先・費用・部数
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 取りやめる年の翌年3月15日まで |
| 提出先 | 納税地(原則は自宅住所)の所轄税務署長 |
| 提出方法 | 窓口持参・郵送・e-Tax(電子提出)のいずれか |
| 手数料 | かからない(無料。郵送時は切手代のみ) |
| 部数 | 提出用1部。控えが欲しい場合は2部+返信用封筒 |
期限を過ぎても届出自体は受理されますが、過ぎた年分は青色申告者のまま 扱いになるため、その年は白色に戻せません。戻せるのは翌年分からになります。「今年からすぐ白色にしたい」なら、期限内に出すことが条件です。
青色申告の取りやめ届出書の書き方(記入例)
書式は国税庁サイトのPDFをダウンロードするか、税務署の窓口で入手します。記入項目は多くなく、15分ほどで書ける 分量です。書き方の手順を順に見ていきます。
- 提出先・提出日:所轄の税務署名と、提出する日付を書く
- 納税地・氏名など:住所(納税地)・氏名・生年月日・職業・屋号を記入する
- 「やめようとする年」:白色に戻したい年(例:令和8年分)を書く。ここが最重要項目
- 青色申告の承認を受けていた年分:いつから青色だったか(承認年分)を記入する
- 取りやめる理由:「記帳負担の軽減のため」「事業縮小のため」など簡潔に書く
「やめようとする年」を1年ずらして書くミスが起きやすい欄です。2026年分の申告から白色に戻すなら「令和8年分」 と書きます。翌年3月15日という提出時期につられて「令和9年分」と書かないよう注意します。理由欄は審査されるものではないので、事実を一言で足りる程度に書けば問題ありません。
書き終えたら、提出用と控え用の2部を用意し、控えに受付印をもらっておくと後々の証拠になります。e-Taxソフトからも提出でき、その場合は控えデータが保存されます。

「取りやめ」「取り消し」「廃業」は何が違うか
青色申告を「やめる」まわりの言葉は紛らわしいので、自主か強制か・事業を続けるか の2軸で切り分けると迷いません。混同すると出す書類を間違えるため、ここは丁寧に整理します。
- 取りやめ(自主):事業は続けるが、自分の意思で白色に戻す。→ 青色申告の取りやめ届出書
- 取り消し(強制):帳簿不備や2年連続の期限後申告などで、税務署が青色を取り消す。ペナルティ性が強い
- 廃業:事業そのものをやめる。→ 個人事業の廃業届出書(青色をやめるには別途取りやめ届も必要)
特に注意したいのが「廃業」との関係です。廃業届を出しても、青色申告の承認は自動では消えません。事業をたたむときも、廃業届と一緒に取りやめ届を出しておくのが正しい対応です。一方の「取り消し」は自分で選べるものではなく、青色の要件を満たせなかった結果として税務署が行う処分で、取り消されると再承認までの制限も重くなります。

白色申告に戻すと失う5つの特典
取りやめの判断で一番大事なのは、白色に戻すと何を失うか を金額感で理解することです。青色だけの特典は、戻した瞬間にすべて使えなくなります。所得規模が大きい人ほど影響は大きくなります。

- ① 青色申告特別控除(最大65万円):所得税率20%・住民税10%帯なら白色比で年19.5万円前後の節税を失う(国税庁 No.2072)
- ② 純損失の3年繰越控除:赤字を翌年以降3年の黒字と相殺できなくなる。初年度の設備投資が保険にならない
- ③ 青色事業専従者給与:家族への給与を全額経費にできなくなり、白色の事業専従者控除(配偶者86万円・その他50万円の定額)に縮む
- ④ 少額減価償却資産の特例:30万円未満の一括経費が使えず、白色は10万円以上を数年かけて減価償却することに
- ⑤ 貸倒引当金・推計課税の制限など:帳簿に基づく防御的な仕組みが外れる
①だけでも、330万〜695万円の課税所得帯では 年19.5万円前後 の節税が消えます。会計ソフト代(年1〜3万円)を惜しんで65万円控除を手放すと、差し引きで損になる帯が広いのが実態です。失う金額の詳しい試算は青色申告のメリット・デメリットで所得帯別に整理しています。
再び青色申告に戻す場合の「1年ルール」
「今年は白色にして、来年また青色に戻せばいい」と考える人は多いのですが、ここに落とし穴があります。取りやめ届を出すと、すぐには青色に戻せません。
青色申告の承認申請は、取りやめの届出書を提出した日の翌日から1年以内 に再申請しても、税務署が却下できると定められています(所得税法145条)。つまり、いったん取りやめると、その後1年は青色の再承認が通らない前提で動く必要があります。
- 2027年3月:2026年分から白色に戻すため取りやめ届を提出
- 提出日〜1年間:この期間に出す青色申告承認申請書は却下されうる
- 再開できる目安:1年を過ぎてから承認申請 → 実務上は翌々年分(2028年分)から青色に戻すのが現実的
だからこそ、「一時的に白色へ」という軽い気持ちの取りやめは高くつく ことがあります。単年度の手間を避けるために取りやめると、翌年もう一度青色にしたくても最短で戻れない、という状況になりかねません。取りやめの前に、本当に「白色でいい」のかを次の章で確認してください。
本当に取りやめるべきか?取りやめずに負担を下げる選択肢
取りやめの相談で一番多い理由は「記帳が大変」です。しかし、負担が理由なら白色に戻す前に試せる手が2つ あります。1年ルールで戻りにくくなることを考えると、まずこちらを検討する価値があります。
- 青色のまま「10万円控除+簡易簿記」に落とす:複式簿記が負担なら、青色を続けたまま簡易帳簿の10万円控除に切り替える。取りやめ届は不要で、青色の資格(純損失の繰越など)は維持できる
- 会計ソフトで複式簿記の手間を自動化する:記帳が大変なのは「手入力」だから。口座・カード連携とスマホ撮影で自動仕訳にすれば、65万円控除を維持したまま月1〜2時間まで圧縮できる
「複式簿記がつらい=青色をやめる」ではなく、「複式簿記の“やり方”を変える」 だけで解決することが多いのが実情です。特に②は、簿記の知識がなくても質問に答える形式で青色申告書まで完成するため、独学で確定申告に臨む人の負担を大きく下げます。白色に戻して年19.5万円前後の控除を失うより、ソフト代年1〜3万円で青色を維持するほうが、多くの所得帯で合理的です。

「記帳が大変」が取りやめの理由なら、白色に戻す前に一度会計ソフトを試す価値があります。freeeは簿記ゼロでも口座連携と質問形式で青色申告書まで完成し、30日間の無料体験で実際の明細を連携して操作感を確かめられます。
freeeを30日間無料で試す(PR)詳細はリンク先をご確認ください
それでも「事業を縮小する」「申告の手間だけを最小にしたい」なら、取りやめは合理的な選択です。判断がついたら、翌年3月15日までに取りやめ届を出せば白色に戻せます。会計ソフトの詳しい比較はfreee確定申告の評判・口コミや確定申告ソフトの比較で扱っています。
よくある質問
Q1. 青色申告の取りやめ届出書の提出期限はいつまでですか?
青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日までです。たとえば2026年分から白色に戻すなら、2027年3月15日までに提出します。この日は2026年分の確定申告期限と同じで、取りやめ届と白色の確定申告書を同時に出すのが一般的です。期限を過ぎた年分は青色申告者のままの扱いになり、白色に戻せるのは翌年分からになります。
Q2. 取りやめ届出書に手数料や費用はかかりますか?
かかりません。届出書の提出は無料で、収入印紙も不要です。窓口持参・郵送・e-Taxのいずれでも提出でき、郵送する場合の切手代が実費として発生する程度です。控えが必要なら提出用と控え用の2部を用意し、控えに受付印をもらっておくと安心です。
Q3. 廃業届を出せば青色申告も自動でやめられますか?
やめられません。個人事業の廃業届と、青色申告の取りやめ届出書は別の書類です。廃業届を出しても青色申告の承認は自動では消えないため、事業をたたむときも取りやめ届を別途提出するのが正しい対応です。廃業する場合は、廃業届・取りやめ届をまとめて提出するとスムーズです。
Q4. 青色申告をやめると、いつから白色申告になりますか?
取りやめ届出書に記載した「やめようとする年」の分から白色申告になります。期限内(その年の翌年3月15日まで)に提出すれば、その年分から白色で申告できます。届出書を出さないまま白色の申告書を出しても、税務署の記録上は青色申告者のままとなり整合が取れなくなるため、戻すときは必ず届出書を提出します。
Q5. いったん白色に戻して、翌年また青色に戻せますか?
すぐには戻せません。青色申告承認申請書は、取りやめの届出書を提出した日の翌日から1年以内に出しても却下されうると定められています(所得税法145条)。そのため実務上は、取りやめの翌々年分からの再開が現実的です。「一時的に白色へ」という取りやめは、翌年すぐ青色に戻せない点に注意が必要です。
Q6. 記帳が大変で取りやめたい場合、ほかに方法はありますか?
あります。青色を続けたまま複式簿記の55万・65万円控除から「簡易簿記+10万円控除」に切り替えれば、取りやめ届を出さずに負担を軽くできます。また、会計ソフトで口座連携とスマホ撮影による自動仕訳にすれば、65万円控除を維持したまま記帳時間を月1〜2時間まで圧縮できます。白色に戻して控除を失う前に、この2つを検討する価値があります。
Q7. 取りやめ届出書はどこで入手できますか?
国税庁のホームページから「所得税の青色申告の取りやめ届出書」のPDFをダウンロードできます。税務署の窓口でも用紙を入手できます。記入項目は納税地・氏名・やめようとする年・承認を受けていた年分・取りやめ理由などで、15分ほどで作成できます。e-Taxソフトからの電子提出も可能です。
まとめ|「戻せるが戻りにくい」を踏まえて判断する
青色申告の取りやめ届出書は、翌年3月15日までに出せば白色に戻せる簡単な手続きです。ただし、失うものと戻りにくさを踏まえて判断する必要があります。
- 提出期限は取りやめる年の翌年3月15日まで。1枚・無料で納税地の税務署へ提出する
- 白色に戻すと65万円控除・純損失3年繰越・専従者給与全額などの特典を一斉に失う
- 再び青色にするには取りやめ届の提出日から1年が空くため、翌々年分からの再開になりやすい
- 「記帳が大変」が理由なら、10万円控除への切り替えや会計ソフトの自動仕訳で青色を維持する道がある
「戻せるが、すぐには戻りにくい」のが青色の取りやめです。単年度の手間で判断せず、失う節税額と再申請の1年ルールを天秤にかけてから届出書を出すのが、後悔しない進め方です。
関連記事
免責事項
※本記事は2026年7月時点の公開情報をもとにした整理です。提出期限・様式・各特例の要件は改正されることがあります。節税額の試算は一定の仮定に基づく概算です。個別の税務判断(取りやめの適否、専従者給与の扱い、再申請の可否など)は、所轄の税務署または税理士など有資格者へご相談ください。

