個人事業主として活動を始める際、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(通称:開業届)を提出する必要があります。従来は紙の書類を税務署窓口に持参するか郵送するのが一般的でしたが、現在はクラウド会計ソフトの開業届作成サービスを使って、5〜10分でオンライン完結できます。
この記事では、マネーフォワード クラウドの開業届作成サービスを例に、開業届をオンラインで提出する手順を整理します。同様のサービスは freee 会計など他社からも提供されており、選び方も後半で触れます。
※ 本記事は税務手続きの一般的な流れを整理したものです。個別の税務判断(青色申告承認申請の出し方、専従者給与の設定など)は税理士または税務署に確認してください。
開業届の基本
開業届とは
「個人事業の開業・廃業等届出書」は、新規に個人事業を開始したことを税務署に届け出る書類です。事業所得・不動産所得・山林所得が発生する場合に提出します。
提出のタイミング
事業を開始した日から 1ヶ月以内 が原則とされています(所得税法第229条)。実際には数ヶ月遅れても罰則は明示されていませんが、青色申告承認申請書の提出期限と連動するため、開業初年度から青色申告を行う場合は 開業から2ヶ月以内 が実質的な期限になります。
提出方法の選択肢
| 提出方法 | 所要時間(目安) | コスト | e-Tax対応 |
|---|---|---|---|
| 税務署窓口で提出 | 30〜60分(移動含む) | 無料 | 不要 |
| 郵送 | 書類作成+投函で15〜30分 | 切手代 | 不要 |
| マネーフォワード クラウド開業届 | 5〜10分 | 無料(会計ソフトの登録は任意) | あり |
| freee 開業 | 5〜10分 | 無料(会計ソフトの登録は任意) | あり |
オンラインの開業届作成サービスは、質問に答える形式で書類が自動生成され、e-Tax 経由で提出できます。
マネーフォワード クラウド開業届の手順(5分)
実際の流れを順番に整理します。
Step 1:アカウント登録(1分)
マネーフォワード クラウド の公式サイトから、開業届作成サービスにアクセスします。メールアドレスとパスワードを設定して、アカウントを作成します。会計ソフト本体の有料プラン契約は不要、開業届作成だけなら無料で使えます。
Step 2:基本情報の入力(2分)
質問に答える形式で、以下を入力します。
- 氏名・生年月日・住所
- 事業所所在地(自宅と同じ場合はそのまま)
- マイナンバー
- 屋号(任意・なくても提出可能)
- 事業内容(職業欄に書く一行と、具体的な業務内容)
- 開業日
職業欄は「Web デザイナー」「ライター」「コンサルタント」のような職種名で記入します。具体的な業務内容は「企業のWebサイトのデザイン・制作」のように、税務署が分類できる程度の具体度で書きます。
Step 3:青色申告承認申請書の同時作成(1分)
開業届と一緒に、青色申告承認申請書も作成するかを選択します。青色申告(最大65万円の特別控除)を初年度から使う場合は、ここで一緒に作っておくのが効率的です。
青色申告のメリット・要件は別記事の ソフト比較 でも触れていますが、特別控除(最大65万円)や赤字の繰越(3年間)など、税務上の優遇があります。
Step 4:マイナンバーカードでe-Tax提出(1分)
書類が自動生成された後、e-Tax(電子申告)で提出するか、PDFをダウンロードして紙で提出するかを選びます。
e-Tax 提出には以下が必要です。
- マイナンバーカード
- ICカードリーダー、またはマイナンバーカード対応のスマートフォン
- 利用者識別番号(e-Tax 初回利用時に取得)
マイナンバーカードを持っていない場合は、PDFをダウンロードして印刷し、税務署に持参または郵送する方法を選びます。
freee 開業との違い
オンラインの開業届作成サービスは、マネーフォワード クラウドのほかに freee 会計も同様のサービスを提供しています。
| 比較項目 | マネーフォワード クラウド開業届 | freee 開業 |
|---|---|---|
| 開業届作成 | 無料 | 無料 |
| e-Tax 提出 | 対応 | 対応 |
| 青色申告承認申請書の同時作成 | 対応 | 対応 |
| 会計ソフト連携(提出後) | マネーフォワード クラウド確定申告 | freee 会計 |
| 月額料金(会計ソフト) | 1,000円〜(プランによる) | 1,180円〜(プランによる) |
開業届の作成体験はほぼ同等です。決め手になるのは、提出後に使い続ける会計ソフトの好みです。
- マネーフォワード クラウド:MFP(家計簿アプリ)と連動、銀行・クレカの自動連携が強い
- freee:質問形式の確定申告UIが優しい、初心者向けに最適化
両社とも会計ソフト本体の無料お試し期間があるため、開業届を作成した後に1ヶ月ずつ試してから選ぶのが現実的です。
開業届を出すときに迷いやすい3点
① 屋号は決めなくていい
屋号(事業の名称)は開業届に書かなくても提出できます。後から追加・変更も可能なので、決まっていなければ空欄でOKです。屋号を決めると、屋号付きの銀行口座を作れるなどのメリットがあります。
② 事業内容は具体的に書く
「フリーランス」「個人事業主」のような抽象的な記載は、税務署側の業種分類で困ります。「Web ライティング」「動画編集」「経営コンサルティング」のような具体的な記載が望ましいです。
③ 自宅住所を書きたくない場合
事業所所在地に自宅住所以外を書きたい場合、レンタルオフィス・バーチャルオフィスの住所を使う選択肢があります。ただし、家賃や利用料が経費計上できるかは別の判断軸が入るため、税理士に相談する価値があります。
提出後にやること
開業届を出した後、以下が連動します。
- 健康保険・年金:会社員から独立した場合は、国民健康保険・国民年金への切り替え手続きが必要(市区町村役所)
- 銀行口座:屋号付き口座を作る場合は、開業届のコピーを持参して銀行で申込
- 会計ソフトの本登録:マネーフォワード クラウドや freee の有料プランへの加入を、事業が動き出した後で判断
- 青色申告に必要な記帳開始:複式簿記(または簡易簿記)での仕訳記録を、開業日からスタート
開業届の控え(提出後にダウンロードできる PDF)は、銀行口座開設や創業融資申込時に必要になるため、必ず保存しておきます。
まとめ|開業届をオンラインで5分
開業届のオンライン提出は、紙の書類と税務署訪問が不要で、5〜10分で完結します。マネーフォワード クラウドと freee の双方で同等のサービスを無料で提供しているため、提出後に使う会計ソフトの好みで選ぶのが現実的です。
青色申告承認申請書を同時に作成しておくと、初年度から最大65万円の特別控除が使えます。提出は開業から2ヶ月以内が実質的な期限です。

